2008年04月14日

【ガガガ文庫】とある飛空士への追憶:犬村 小六5

ガガガ文庫


とある飛空士への追憶:犬村 小六 著


設立間もない小学館ガガガ文庫。
当初は新人賞受賞作にはまともなものがない!と言われていたのですが、
やっとまともなものが出てきた!と噂されているタイトル。

ちなみに

×とある飛行士への追憶
×とある飛行士の追憶
×とある飛空士の追憶


○とある飛空士への追憶
です。

意外と間違ってる人多いようですw
私も最初は『飛行士』と読んでましたw


ストーリーや設定に奇抜なものは特になし。純粋にファンタジーな戦闘機モノ。
主人公シャルルの住む町は、敵国を占領してできた植民地。
敵国が勢力を伸ばしてきたため、陥落も時間の問題。
私設空軍にエースパイロットとして所属するシャルルに下された命は、
「次期皇太子妃ファナ嬢を飛行機に乗せて1万2千キロ離れた自国領まで逃がせ。」
自国領までの飛ぶには敵国領海のまっただ中を通らなければならない。
敵国の軍事技術力は自国よりも遙かに上で、飛行機の性能も段違い。
さらに、自分と皇太子妃の二人乗りなため重量の面で不利とくる。
ひたすら隠れながら飛び、見つかったら逃げるのみ。

無謀とも思える作戦だが、自分には出来る。不可能ではない。
エースパイロットとしてのプライドと、
幼少時から心の支えだったファナにもう一度逢いたいという動機で了承するシャルル。

飛行、補給、食事、睡眠と二人きりで過ごしていくうちに幼少時の接点が明らかになり、政治の道具として育てられたせいで心を閉ざしていたファナが次第にシャルルに心を開いていく描写が必見。

お互い惹かれ合っていることは分かっているけれど、
シャルルは混血の流れ者。ファナは次期皇太子妃。
この作戦を完遂するということは必然、両者の別れを意味する。
特に、道中の無人島での楽園的な描写が、
徐々に近づく二人の別れを嫌でも意識させられるものになっていて、それがとても切ない!
王道とも言えるストーリーだけど、上手く緩急織り交ぜた展開のため飽きが来ない。

こういう王道的な展開だと最後が限定されるため、
ある程度予想できてしまうのはしょうがないが、
それを差し引いても上手いまとめ方で終わらせてあり、
持っていた本をテーブルの上に静かに置いて、
ため息を(*゚∀゚)=3ふう とつきたくなるようなスッキリとした読後感がある。

作中における科学技術説明も破綻無くまとめられてあり、
ディープな説明に置いていかれることもない。
ラノベ耐性があまり無い普通の人にもオススメできる逸品。

high_quality_velvet at 13:26│Comments(0)TrackBack(0)ガガガ文庫 

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